お師匠と漢字のはなし

鍼する左手 灸する右手

 

中堅鍼灸師のマツハリ先生と健康マニア宇宙人のキュウタロウ君のドタバタ鍼灸問答です

わかりそうでわからない、鍼灸の世界を垣間見てみましょう!

Special お師匠と漢字のはなし

 

キュウタロウ : あれれ、おーい、マツハリ先生~
ダイジョウ道士: おぬしは誰じゃ?

キュウタロウ : おじいちゃんこそだーれ?
ダイジョウ道士: わしゃダイジョウ道士と呼ばれておるわ。

キュウタロウ : 道士さん、マツハリ先生どこ行っちゃったの?
ダイジョウ道士: ほほ。ヤツは弟子に勉強を教えに行っとるわ。

キュウタロウ : なんだよ~。お弟子は僕だけじゃないのか~。
ダイジョウ道士: ほほ。おかしなことをいう小僧だ。おぬしも弟子とな。

キュウタロウ : しっかり勉強してるんだからね。
ダイジョウ道士: そうか。なら、おぬしはわしの弟子でもあるってことじゃぞ。ほほほ。

キュウタロウ : えー。もしかしてマツハリ先生のお師匠なの?
ダイジョウ道士: ほほ。そうなるかのぉ。

キュウタロウ : じゃ、おじいちゃんは本当に僕のお師匠だね。
ダイジョウ道士: ほほ。かわいい弟子ともなれば何か教えてやらんといかんかのぉ。

キュウタロウ : うんうん。教えて教えて!このまま帰るのも嫌だから。
ダイジョウ道士: まぁ、それほどあわてんでもよろしい。でも、その心意気も大切じゃよ。

キュウタロウ : 何教えてくれるの?
ダイジョウ道士: わしゃ、本来、聞かれたことしか答えんのじゃ。じゃが、それだとおぬしが困るだろうから、文字についていくつか教えてやろう。

キュウタロウ : 僕、結構、漢字知ってるよ。薔薇でしょ、醤油でしょ、憂鬱、躊躇。。。
ダイジョウ道士: ほほ。賢い子かもしれんのぉ。じゃ、質問するとしようか。おぬしは「運」という文字の意味を知っとるか?

キュウタロウ : 運っていうのは、いい事があるか、ないかってこと?
ダイジョウ道士: あながち間違いではない説明じゃが、文字の意味はわかっておらんようじゃな。

キュウタロウ : そうなの?
ダイジョウ道士: 運という文字はシンニョウと軍(いくさ)という文字から出来ておるのじゃ。シンニョウはもともと「行く」と「止まる」という意味じゃ。つまり「行くこともあれば止まることもある意味」となる。そこに軍ともなれば、生死をわける重要な決断の連続なわけじゃ。

キュウタロウ : 運ぶっていう意味でもいいんだよね?
ダイジョウ道士: 運ぶということも、進んだり、止まったりするわけじゃ。

キュウタロウ : 運っていうのは、すんなり進むわけじゃないんだね。運は「いいこと」だけじゃないってことかな。
ダイジョウ道士: おぉ。さすがわしの弟子じゃ。賢いのぉ。その意が汲めれば十分じゃ。

キュウタロウ : うわぁ~うれしいなぁ。お師匠、もっと教えてよ。
ダイジョウ道士: しかたないのぉ。では、おぬしは王という漢字の意味を知っとるか?

キュウタロウ : えー、全然わからない。エライってことじゃないの?
ダイジョウ道士: よいか、真意を教えてやろう。王という文字は横に線が三本あるよのぉ。これぞこの世じゃ。天、人、地、それぞれを表しておるのじゃ。そして、その中心に棒を引いて、すべてをしっかりわきまえ、知る者という意味で尊ばれるべき王というわけじゃ。

キュウタロウ : 簡単な文字に見えて、すごく深い意味があるんだね、お師匠。
ダイジョウ道士: そうじゃな。せっかくなのでおぬしにはもう少し文字を教えてやろう。

キュウタロウ : はい!お師匠。お願いしますー。
ダイジョウ道士: ほっほほ。文字ばかり言っとると、文字だけしかわからんヤツみたいに思われるがの、おぬしの理解しやすいのもまた文字であろう。文字はのぉ、伝統であり、文化なんじゃよ。文明なんじゃよ。歴史の集積なんじゃよ。美しい先祖の生き様なんじゃよ。

キュウタロウ : お師匠ってロマンちっくなんだね。
ダイジョウ道士: ほっほほ。おぬしは元気の元という文字を知っとるか?

キュウタロウ : うん。たぶん文部科学省ってヤツの常用漢字は全部知っていると思うよ。
ダイジョウ道士: そか。小さいのに感心じゃのぉ。じゃがの、知っとるのと理解(わか)っとるのでは、ちと意味が違うのじゃぞ。

キュウタロウ : う~ん、僕は知っているってだけだと思う。
ダイジョウ道士: よいか。元気の元は「元」とこのように書く。「見」という文字はこうじゃ。「兄」はこういう文字じゃな。何か気が付かんか?

キュウタロウ : え?どういう意味?
ダイジョウ道士: 光、児、充、冗、先、兜、免。おぬしが何か言わんと、わしゃどんどん書くぞ。

キュウタロウ : えっ。あっ、わかったわかった。下ににょろにょろがある。
ダイジョウ道士: ほっほほ。わかったかのぉ。さすがわしが見込んだヤツじゃ。

キュウタロウ : えっ?適当に言ったんだけどあってるの?
ダイジョウ道士: まぁ、なんじゃ共通点に気づけば合格なんじゃよ、この場合は。おぬしが知らぬことを答えよというのも限界があるからのぉ。

キュウタロウ : お師匠、共通点の意味って何なんですか?
ダイジョウ道士: おぬしが言った「にょろにょろ」というのは、人という意味を持つ部位なんじゃよ。

キュウタロウ : う~ん、そう言われれば、そう見えなくもないけど、違うようにも思えるなぁ。
ダイジョウ道士: 完全に一致はしとらんが、想像力を働かせる必要があるのも文字の世界じゃ。よいか、かたっぱしから説明してやるからのぉ。

キュウタロウ : お願いします。
ダイジョウ道士: まず、元気の元じゃ。これは最後の二画が人じゃ。さっき言ったようにのぉ。最初の二画で人間の首を表しておる。首というものは、最初という意味がある。学業優秀な人物は首席で卒業などというよのぉ。元ははじめであるから、年号のはじめを元年という。一年のはじめは元日じゃのぉ。

キュウタロウ : そういう意味なのか。人の絵を書いて、ここに注目ですよって書いていたんだね。
ダイジョウ道士: 次は「見」じゃな。これは簡単じゃろ。人のなかで目に注目という象形文字じゃ。

キュウタロウ : つまり、目で見るってことか。
ダイジョウ道士: そうじゃ。次の「兄」はちょいと説明が必要じゃな。

キュウタロウ : うん。人の口(クチ)でなんで「兄」なの?
ダイジョウ道士: 口(クチ)という文字に見えるが「口(サイ)」という神への祈りの言葉を収めた入れ物を表しているじゃ。

キュウタロウ : 口(クチ)じゃないのか。
ダイジョウ道士: 古代では一家の長兄が神への祈りを捧げる役目を負ったのじゃよ。この文字がうまれるころの風習じゃな。そこから兄という文字だけが残り長兄が神への祈りを捧げるという文化が消え失せたんじゃ。

キュウタロウ : お師匠みたいに昔のことに精通していないとわからない話だね。
ダイジョウ道士: ほっほほ。まだまだ行くかのぉ。「光」は人が火を持っている状態じゃ。

キュウタロウ : 光っている感じがでているね。これは納得。
ダイジョウ道士: 「児」は総角(あげまき)とか角髪(みずら)と言ってのぉ、聖徳太子の絵などで目にする特徴的な髪型なんじゃ。古代は子供が小さいうちににこのような髪型をしておったので、ここから「児」という文字になったんじゃよ。

キュウタロウ : そういう絵から出発したと考えると漢字はうまく文字の特徴を捉えているね。
ダイジョウ道士: 「充」はなんとなくわかるかのぉ。太っておる人を図案化するとこうなったわけじゃ。転じて充分の充、充満の充なんじゃよ。

キュウタロウ : わかるわかる。でーんと、ずっしり構えた感じしているものね。
ダイジョウ道士: 「冗」は祖廟(みたまや)に宿直(とのい)する人をいうんじゃ。つまり、先祖の墓を守るために常駐しておる人物のことじゃな。ただ、そこに常駐しておってもあまり仕事がないので、「無駄」とか「余計な」という意味を持つわけじゃよ。その意味からすると冗談は無駄話、冗費は無駄な費用、冗長は無駄に長いことをいうわいなぁ。

キュウタロウ : 冗も人の文字が変形しているのかぁ。
ダイジョウ道士: 「先」は人のうえに足あとが書いてあると考えてよいじゃろ。そこから先に行くこと、この先があることと考えてよかろう。

キュウタロウ : 連想ゲームの世界だね。
ダイジョウ道士: そうじゃ。特に次のものも面白いもんじゃぞ。「兜」じゃ。これはどういうことかわかるかのぉ。

キュウタロウ : 連想っていうより、兜の意味を知っているから、これが答えだよね?
ダイジョウ道士: ほっほほ。そうじゃな。兜は頭を守る防具のひとつじゃな。では「免」はわかるかのぉ?

キュウタロウ : えー、わからないよ~。
ダイジョウ道士: コレコレ。よく見て考えるんじゃ。よく考えること、悩むことも大事じゃぞ。

キュウタロウ : よーく見ればいいんでしょ。う~んと、う~んと。。。
ダイジョウ道士: どうじゃ?なんかわからんか?

キュウタロウ : うーん。わからないよ。お師匠、教えてくださいな。
ダイジョウ道士: よかろう。免はのぉ、兜と文字がそっくりなんじゃよ。

キュウタロウ : あれれ?ほんとだ。免という文字の上の方に括弧を書いたら兜そっこりだ。
ダイジョウ道士: 兜を脱ぐことが免なんじゃよ。よいか、つまりな戦陣において礼を尽くすときは兜を脱いだわけじゃよ。それで許されるわけじゃ。そこから免は「許す、許される」という意味を持つ。免許、免状、免責などという言葉があるんじゃ。

キュウタロウ : うわぁ。いっきにすごい勉強になった~。お師匠ありがとう~。
ダイジョウ道士: まぁ今日みたいな日があってよかろう。おぬしも一日を無駄にせずに済んだようじゃからのぉ。

キュウタロウ : ところで、お師匠はなんでマツハリ先生の鍼灸院に来ていたの?
ダイジョウ道士: ワシの行動に意味はないわ。風の向くまま気の向くままじゃ。

キュウタロウ : なんか、お師匠ってスゴイや。
ダイジョウ道士: よいかキュウタロウ、今度ワシに会うときは必ずおぬしが質問するんじゃぞ。今日のところは文字だけじゃが、東洋医学をはじめ東洋史観というものは実に奥が深い。自ら悩み、考え、もがくんじゃぞ。これが最初で最後になるやもしれん、ワシからの教えじゃ。いやいや、何も心配せんでよい。ワシは不死身ゆえ、おぬしが会う必要があれば必ずやまた逢えるじゃろう。ささ、ワシも行くとするかの。

キュウタロウ : (お師匠ちょっと変わってる人だなぁ) うん。ありがとうお師匠、またね。
ダイジョウ道士: ほっほほ。精進するのじゃぞ。ほっほほほほ。

ジリリリリーーー

マツハリ先生 : おーぃ、キュウタロウ起きてーー!
キュウタロウ : (ムニャムニャ)お師匠、、、。

マツハリ先生 : どうした??ずいぶんハッキリ寝言いうね。
キュウタロウ : あれれ?お師匠は?

マツハリ先生 : おいおい、しっかりしてくれよ。
キュウタロウ : 夢だったの?あれれれ。

 

特別編を終えて

 

今回は次回が最終回ということもあり、少し違った内容でお届けしました。

漢字は私がまだまだ研究する範囲であると思います。そして晩年のライフワークになると思っている分野です。文字の成り立ちでも、当時の価値観や文化が垣間見えるすごい情報源だと思っているからです。

私たちが歴史に学ぶうえで、この当時の情報源は参考になることが多いと思います。ぜひ一緒に興味を持っていただけたら嬉しいなと思い特別編として登場しました。

いよいよ次回は『鍼する左手 灸する右手』が最終回です。どのお話から読んでも東洋医学的な内容を垣間見ることができます。まだお読みでない方はぜひお時間のあるときにお楽しみいただければと思います。

 

 

「吐く」が「叶う」で国が滅びる!?

013漢字の意味と成り立ち「莫(かくれる)」

 

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マツモト コウイチ

東洋思想研究家でありUdemy講師でもあります。開業15年超の鍼灸師です。ビジネスから教育、エンターテイメントまで多くの人の成功と挑戦を東洋思想家として見渡しています。すべての投稿に関して講義講演が可能な内容となっています。居敬窮理(振る舞いを慎み、道理をきわめて、正しい知識を身につけること)を実践していこうと思います。

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