「吐く」が「叶う」で国が滅びる!?

テレビに出ている有名人・著名人だけではなく、そこかしこで講演をしている人まで「少し良いこと」を語ることがあります。それでもなかには私にとって聞き捨てならないことがあります。

それは、本来の解釈ではない、独りよがりな解釈を昔からあったかのように吹聴(ふいちょう:あちこち言いふらすこと)することです。

それがウィットやユーモアの一環ならまだしも、聞く側に本物との違いを教えずに独自解釈だけを情報として渡すのです。これでは害悪となります。今回はその危惧と本来の字義のお話。

 

違うでしょ

 

「吐く」という漢字を見てください。

ここから「マイナス」を取れば夢が「叶う」のです!

 

( ゚д゚) …。

 

ちがうでしょー。どこからこのような流れになるのかアカデミックに説明することはできません。

 

吐くは「はく」、吐は「たぐる」と読み嘔吐することをいいます。

叶うは「かなう」と読み一定の条件に適合すること、それによって期待されたことが実現することをいいます。(詳細は後述)

そもそも「一」の一画の漢字において「マイナス」なんていう意味はありません。

もちろん、この記事をお読みの方はこのような文字遊びに本気で感心している人がいるとは思いませんが。…せっかくですから最後までお読みください。

 

なぜ気にするのか

 

子曰わく述べて作らず信じて古を好む   ― 孔子

 

まず孔子は『論語』において古文を解説することはあっても、自説を言うことは控えるように言っています。これはさまざまな説が出揃うと同じことでも違う考え方や伝わり方をしてしまい混乱するのを避ける意味があります。

 

名正しからざれば即ち言順わず   ― 孔子

 

言葉を正すことが政治においてもっとも始めに行うことだと伝えています。

正しくないことが広がるとやがて大きな混乱になります。ですから、将来的な混乱を防ぐには言葉のひとつにおいても正しておかなければなりません。

ここで「吐く」と「叶う」という文字は全然関係ないというのは誰しも知る事実ですが、妙な言説が独り歩きして時代を過ぎると間違った解釈が正しいように映るので、早くから注意が必要なのです。

 

もっと良いことをお教えします

 

さて「叶う」という文字について説明します。

 

「夢が叶う」など良い意味を期待させてくれますね。先述しましたように「期待されたことが実現すること」をあらわす漢字です。

 

左の偏の部分は口(くち)ではなくサイといって祝詞をしまっておく箱を表すのですが、話しが脱線してしまいますので、これについては割愛(またの機会に)とさせてください。

 

本題に戻ります。

叶は「きょう」と読み、協(きょう)の略体の字です。

古代の漢字辞典である『説文解字』によると「衆の同(とも)に和するなり。劦(けふ)に從い、十に從ふ」とあります。

 

力は耡(すき)の形であり、協はもともと共耕の意味があります。

耕作に協力することをいいます。同じ条件で相合するので「かなふ」というのでしょう。

 

つまり…

 

古代中国人は「叶う」という文字において

「期待されたことが実現する」には「力をあわせて成し遂げる」ことが条件だといい、

なかでもの「同(とも)に和するなり」と言っています。

 

このことから、夢の実現のためには仲間と力をあわせる必要があると教えてくれるのです。

 

さいごに

 

夢の実現のためには「吐く」など関係なく、仲間を求め協力し力を合わせることが大切なのです。そして、そのためには自分が成し遂げたいことを伝える努力も必要ですし、相手の理解をすることも大切です。ましてや、そのようなことが一朝一夕でできることではないと常識的に理解できるでしょう。

それだけ、夢の実現には準備や順序が必要なのです。

単に《ネガティブなことを吐くな》などと耳障りのよいことだけでは無いのです。

 

 

漢字は古代中国人の価値観が満載されたメッセージです。

個人の現代的な勝手な解釈ではなく、古人の価値観を共感することによって人生訓を学ぶ姿勢のほうがよほど有益だと思います。

 

いま一度、漢字の奥深さに触れるとともに古代中国人の発想を参考にしてみるのも悪くないと思います。間違っても本来の解釈ではない独りよがりな解釈を真に受けないように教養のレベルを高めて対処していってほしいと思います。

 

 

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マツモト コウイチ

東洋思想研究家でありUdemy講師でもあります。開業15年超の鍼灸師です。ビジネスから教育、エンターテイメントまで多くの人の成功と挑戦を東洋思想家として見渡しています。すべての投稿に関して講義講演が可能な内容となっています。居敬窮理(振る舞いを慎み、道理をきわめて、正しい知識を身につけること)を実践していこうと思います。

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