五臓について(腎)

鍼する左手 灸する右手

 

中堅鍼灸師のマツハリ先生と健康マニア宇宙人のキュウタロウ君のドタバタ鍼灸問答です

わかりそうでわからない、鍼灸の世界を垣間見てみましょう!

#24 五臓について(腎)

 

キュウタロウ : 五臓っていうくらいだから、次の腎が最後の五つ目だね。
マツハリ先生 : そうだね。しっかり勉強してね。

キュウタロウ : うん。もちろんだよ。なるべくわかりやすくね。
マツハリ先生 : そうは言うものの、腎は難しいんだよな~

キュウタロウ : 腎の機能くらいから教えてよ
マツハリ先生 : 腎の機能っていうと西洋医学的になってしまうから、腎の性質ってことで答えるね。

キュウタロウ : それを簡単に言うと??
マツハリ先生 : そうだな、凝集性ってことが言えるかな。

キュウタロウ : どういうこと?
マツハリ先生 : 例えば、水滴の形って絵にかけるかな?

キュウタロウ : 涙みたいな形だよね。
マツハリ先生 : そうそう、それでいい。そういう形にまとまることを凝集性っていうんだ。

キュウタロウ : まとまる性質ねぇ…。
マツハリ先生 : 他にも液体はすべて腎に関係するよ。

キュウタロウ : 液体っていうのは血液とか?
マツハリ先生 : 血液だけじゃないよ、涎(よだれ)、唾、涙、汗、おしっこもすべて液体だから腎と関係しているんだ。

キュウタロウ : そうなんだぁ~
マツハリ先生 : 腎臓だと血液を濾過(ろか)して尿を生成していると思うでしょ?それが一般的な認識だと思うんだけど、それだけじゃないんだ。

キュウタロウ : ところで、凝集性と液体って関係ないんじゃないの?
マツハリ先生 : そんなことないよ。液体が体から出ていく作用によってまとまろうとする。それを凝集性って考えたら納得してくれるんじゃないかな。

キュウタロウ : そう言われればそうか。
マツハリ先生 : 腎が弱まってくると助けなければならないよね。そうすると横たわりたくなるんだよ。

キュウタロウ : なんで腎を助けるために横になるの?
マツハリ先生 : 腎が弱ると口が乾いて、足が浮腫む(むくむ)ようになるんだ。

キュウタロウ : うんうん。
マツハリ先生 : それだけじゃなくて、頭に血が集まりやすく熱くなる。足先は浮腫むけど、冷えやすく鳴る。これを逆気(ぎゃっき)って言うんだ。

キュウタロウ : 水の配分がアンバランスになった状態だね。
マツハリ先生 : そうなんだ。実は、腎が弱くなるっていうのは、心が強くなるってことをあらわしている。相対的に見てのことだね。

キュウタロウ : つまり、逆気は腎だけじゃなくて、腎と心のバランスってことか。
マツハリ先生 : そうそう。そのバランスを整えるために心の負担も減らす必要があるわけさ。だから、上とか下とかを無くしたほうがいいわけ。熱は上にのぼる性質があるから、それを防ぐことになる。

キュウタロウ : そうすると、体を横にしたほうが心臓が楽なんだね。
マツハリ先生 : そう。腎と心を手っ取り早く整えるには横になること、つまり寝ることがいいんだ。

キュウタロウ : 眠くなったり、ボーっとするのは、腎とか心とかバランスを欠いてしまったってことなんだね。病人も横たわるから回復するのか。
マツハリ先生 : そう思うと腎だけを考えるのではなくて、心も考えに入れる必要があるんだ。理解するのは難しいかもしれないけど、五臓は五個だけど、五個バラバラじゃないんだよ。五臓で一
つの機能、つまり「生きる」という役割になるわけさ。ただ、それだけだとよくわからないので、ひとつひとつ、関係性を説明しているわけ。

キュウタロウ : よく考えればそうだよね。心臓病って言っても心臓のトラブルに見えるけど、血液は液体だから腎だし、心臓という器は脾だものね。その働きは肺の気だし、神経やホルモンが関
係していると思えば肝だものね。
マツハリ先生 : おぉ、偉いね。そこまでわかるようになったのか~。なかなか鍼灸師でも理解していない人が多いんだから。

キュウタロウ : 東洋医学は考え方だもんね。「鍼灸師は鍼を刺すことしか考えてない」ここに大きな落とし穴があるんだよね。。
マツハリ先生 : まったくたくましくなったものだよ。それじゃ気分がいいので、余計なことを教えてあげるね。

キュウタロウ : わーい。
マツハリ先生 : この前、『#3鍼で痩せるの?』って質問があったよね。それに答えてみたいと思う。

キュウタロウ : ま、まさか。。。うれしい。
マツハリ先生 : 最初に言っておくけど、簡単じゃないからね。

キュウタロウ : えっ(笑)
マツハリ先生 : さっきさぁ、腎は凝集性って言ったよね。人体には一定の凝集性が必要なんだ。

キュウタロウ : うんうん。
マツハリ先生 : 塩分不足だと無気力になってしまうんだよ。

キュウタロウ : もしかして、夏とかだるいのはそのせい?
マツハリ先生 : 汗で塩分が出るっていうのもわかるよね。それだけじゃなくて梅雨時なんかもだるいのは、土用ということで脾だよね。土剋水で腎が剋されるからだね。

キュウタロウ : しっかり塩分を取らないとダメなんだね。
マツハリ先生 : そう。塩分控え目っていうのは、控え目が必要な人だけ。腎臓が悪い人、汗をかかない人、高齢の人なんかだね。

キュウタロウ : 腎は凝集性に関係する、その腎は塩と関係しているんだね。
マツハリ先生 : そう。そして大切なことを言うよ。「太るのは肺と腎の機能が弱くて肝、心、脾が亢進して崩れているせい」なんだよ。

キュウタロウ : へぇ~。
マツハリ先生 : つまり、やせる治療法としては肺と腎を強化すればよいんだ。

キュウタロウ : おぉ、良いこと聞いた~。
マツハリ先生 : 勘違いしちゃだめだよ、水を飲めばいいってわけじゃない。水は吸引作用を持っているので冷気を集めるんだ。水太りの人は冷え性になりやすいし、冷え性の人は水太りになりや
すいってことさ。

キュウタロウ : 肺と腎を強化か…
マツハリ先生 : 他にもいろいろな方法はあるんだけど、、、教えない。

キュウタロウ : ケチっ!
マツハリ先生 : 違うよ。痩せるために鍼灸をするのではなくて、健康になった延長線に痩せるっていう結果があるんだよ。痩せるために鍼灸をするっていう考えは道を誤るから気をつけなければ
ダメだよ。

キュウタロウ : そうなのか。反省すべきは僕の方なんだね。
マツハリ先生 : まずは自分のことがしっかりできてから、鍼灸の恩恵を受ける方がいいんじゃないかな。

キュウタロウ : 先生は本当に商売っけないね。
マツハリ先生 : 商売っけあってどうするんだよ。そういう小さい考えを持っていては大成しないからね。

キュウタロウ : うん。僕もまだまだ反省することが多いんだね。
マツハリ先生 : いや、ずいぶん立派になって来たよ。もっともっとたくましくなってほしいね。

キュウタロウ : ありがとう。これからも頑張るよ!
マツハリ先生 : そうこなくっちゃ。私も負けないように頑張ろうっと!

 

第24話を終えて

 

五臓は五行のバランスを象徴しており、この5回で五臓それぞれの特徴的なシーンを表現してみました。

究極的にはこの五行も陰陽の2つに分けることができ、その意味では火と水、その水の代表である腎は重要度が高いと言えます。

また脾を後天の元気、腎を先天の元気というところから、生まれつきである先天の元気は増やすことができず授かった火種を後天の元気によって灯し続けるロウソクのような比喩で語られることが多いものです。そのように腎を理解することは治療効果や回復、老化などさまざま点で考えに絡んでくるのでしっかり理解しておきたい点でもあります

(鍼灸師において治療や予防の面では腎水の理解は本当に大切だと思っています)

一般の方でも興味があれば、五行(五臓)それぞれの項目をいまいちど読み返していただきたいと思います。あらたに気づくこともあるかもしれませんので。

 

 

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マツモト コウイチ

開業22年超の鍼灸師です。