足がつるをしっかり治す

 

ある人は「足がつる」といい、ほかの人は「こむら返り」ということがあります。突然、筋肉が痙攣(けいれん)してあまりの痛さに不安になる人も多いと思います。今回はいわゆる「足がつる」を治し予防しましょうというお話しです。

 

アシガツルのは困る

家庭の医学で調べても


一般の人は「足がつる」をどうやって調べるのかと、ふと疑問に思ったので家庭の医学で見てみることに。

 

なぜ最初に家庭の医学(書籍)かというと、ネットでは簡単に検索結果が出てくるのですが、その論拠の信頼性が疑われたこともありサプリの宣伝に直結するのかな?と思ったのでネット検索はとりあえず後回しにしました。

 

そもそも私も医療人のはしくれ。説明することは多いのですが、最初に思ったのは「足がつる」というのはさまざまな原因でなるので、端的に「こうすれば良い」と伝えにくいと思ったのでした。

 

ですから、プロ仕様の医学書ではなく、一般向けの本になんと書いてあるのか真っ先に興味が湧いたのです。

 

 

調べにくい。


結論からいうと、あまり明確な答えは書いてありませんでした。選んだ本にもよるのでしょうけれど、本文ではなく欄外に解説がありました。

 

そもそも「足がつる」という単語では索引に載っていませんでした。

 

医学書でも同じだと思います。なぜなら「つる」のは足だけとは限らないから。

 

「つる」状態を「痙攣(けいれん)」という言葉に置き換え、これなら医学的だろうと調べてみても、望む結果は得られませんでした。

 

確かに「けいれん」の意味は自分の意思とは関係無く筋肉が急に収縮する状態だといいます。それでも、もっと重篤な痙攣という状況があり、書籍ではそちらの記載が主にありました。例えば、高熱からくる熱性けいれん、一定時間続く全身性のてんかんの発作などです。これらも「けいれん」という状態です。

 

足がつる、、、そういえば、、ふと、思い出して「こむら返り」という言葉に気が付きました。

 

よく、こぶら(コブラ?)返りとか真剣に間違えて伝えてくる人がいますが、こむら返りの「こむら」は腓腹筋(ひふくきん)という文字の「腓」で「こむら」と読みます。

場所は、アキレス腱の上方で膝裏の下の筋肉です。

 

いわゆる「ししゃも足」なんて例えが出てくる部位です。

 

 

医学でもなんでも、こういう別名というかスラングというか、一般的ではなく俗に言う単語のほうが一般的になっている場合は誤解があったり、検索に不利だったりしますね。

 

今回の「足がつる」もそのような印象を受けました。

 

私も「けいれん」として探すことがありましたが正確にいうと「筋けいれん」とすべきでした。足がつるのは「筋けいれん」です。

 

こむら返り

 

こむら返りとは、ふくらはぎの筋肉んことをいい、この部分のけいれんを俗にこむら返りといいます。筋肉の疲労で筋肉が硬く緊張し、強い痛みを伴います。ときに同様の症状が足全体やもっと広い範囲に起こることもあります。

 

先述しましたように、ここでは「筋肉の疲労」と言っています。原因はたくさんあるのですが、結果的に「疲労だよ」という表現です。間違いではないのですが、もう少し明確に対処法を知りたいので、筋肉について少し理解しておくと良いでしょう。

 

足の筋肉

 

足がつるのは、足の筋肉に負担が大きいから。実際は足がつりそうなときは、脇腹でも首でも、腕でも指先でもどこの筋肉でもつりやすい状態なのです。

 

ただ、足は立っているだけでも力が入っています。

 

立ち止まる(直立不動)というのは、骨に対していくつかの筋肉が協調してバランスを取っているだけで、十分な筋力を必要としています。

 

(ヘリコプターが上空に止まっている姿を思い浮かべれば、動いていなくともエネルギーの消費は激しいということが理解できると思います。)

 

筋肉が疲れるというのは、筋肉を伸び縮みさせる機能がうまくいかないこと。

 

この動きのエネルギー源はATP(アデノシン三リン酸)という物質。

 

主に炭水化物に含まれる「グルコース」という栄養素を分解して作られるもの。筋肉にはATPがあるのだけれど限りがあるため、このエネルギー源を使い果たすと「疲れた」ということになります。

 

 

ちなみにエネルギーの燃えカスとしてできたものが乳酸です。これが筋肉に残ったままだと「筋肉痛」となります。(ですから、運動直後に血流が悪いと後日筋肉痛になります。運動後のケアって大切。)

 

 

センサーの機能

 

筋けいれんの原因は他にもあります。

 

 

筋肉と骨をつないでいる部位を腱といいますが、この腱と筋肉にはそれぞれ伸び縮みを感知するセンサーの役割を果たす器官がそなわっています。

 

筋肉の伸びを感知するのセンサーは「筋紡錘(きんぼうすい)」、腱には腱の伸びを感知する「ゴルジ腱器官」というものがあります。

 

筋紡錘が一定以上の筋肉ののびを感知すると、その信号は脊髄に伝わり反射的に筋肉に「筋肉を縮めよ」という信号が出ます。

筋肉が縮み腱が伸びてくると筋紡錘の信号は出なくなります。

筋肉が縮んだは良いけれど、腱が伸びて引っ張られるとゴルジ腱器官が腱の伸びすぎを感知して脊髄に信号を送ります。このように、急激な動きであっても各センサーの役割があり極端な筋肉や腱の伸びが徐々に抑えられるのです。

 

 

だから疲れると…

 

筋肉が疲れているとゴルジ腱器官からの信号が弱まり、反対に筋紡錘からの信号が強まるといいます。その結果、必要以上に筋肉を縮めるよう信号が出続けるのです。これが筋けいれんであり、足の場合ですと、足がつるという状態なのです。

 

また、ここがポイントでもあるのですけれど、なぜゴルジ腱器官の信号が弱まるのかという異常事態が起きるのかは明確にはわかっていないことが多いようです。

 

言えることはいくつかあるのですが、それらを含めて「疲れているため」と説明しています。

 

さまざまな悪条件

 

「疲れている」のと同義に読めますが「血行が悪い」ために足がつることは間違いないようです。

 

ですから、血行を常に良い状態に保てば良いことになります。

 

 

足がつるということに限らないのですが、

 

血行が悪いと栄養素の供給が十分に行われません。

酸素の供給も十分に行われません。

老廃物も筋肉にとどまったままです。

なぜなら血液で栄養素を供給したりガス交換しているからです。

 

 

対処法のまえに

 

足がつるのを防ぐには、「足」に限らず血流が悪いと考えます。

血流が悪い状態であり、負荷がかかる場所として「足の筋肉」が多かっただけです。

 

(ですから、物書きが増えれば指がけいれんしますし、前傾姿勢なら首肩が寝違えるようになるでしょう。)

 

 

血行が悪くなることすべてが筋けいれんの前提条件となります。

 

そういう意味では、運動不足、寒暖差、お酒の飲み過ぎ、寝不足、ストレス、怒りすぎ、考え過ぎなども含まれるでしょう。

 

最近の研究では、脱水状態は筋けいれんにあまり関係ないということが言われていますが「直接関係ない」だけであって、脱水状態からひいては血行障害になれば「間接的に」影響することが考えられます。

 

本題の対処法ですが

 

まず、事前に述べましたそれぞれの偏り(運動不足、寒暖差、お酒の飲み過ぎ、寝不足、ストレス、怒りすぎ、考え過ぎなど)をなくす生活を心がけましょう。

 

事前に運動をするとわかっているのであればATPを事前に筋肉に十分行き渡らせておく必要がありますので、炭水化物(ごはんやパン)を摂っておくと良いでしょう。

(逆に極端な炭水化物を除いたダイエットなどでは筋けいれんが起きやすいと言えます)

 

そして、血流を極端に変えてしまうなかに、お酒やお薬があります。お薬はお医者さん・薬剤師さんに相談してみてください。

お酒に関しては、簡単にいうと飲む量を減らしてみることが最優先です。アルコールは塩分・水分を体の外に排出してしまいますから、血行が不安定になる可能性が高いです。

 

軽めの体操(ストレッチ)は筋紡錘の異常を回復させるのに役立ちます。抑えめな動きで1日に分散させて行うと良いでしょう。

 

東洋医学(鍼灸)でみると

 

(漢方薬でいうと自分でケアすることがなくなってしまい薬剤師さんに聞いてくださいというのが正解になるので、ここでは割愛します。)

 

東洋医学(鍼灸)でいうと、肝臓系統と関連があると考えます。

 

また肝臓系統は五行でいう木となり、木は春、朝、風にあたるなどさまざまな象意があります。

 

簡単にいうと「動く」というのが木の象意なので、足がつる(筋けいれん)も完全に木に関係するのです。

 

雷も草木の芽吹きも、花が咲くこともすべて「止まる→動く」という木の象意です。その意味では神経痛やめまいなどは春や朝に多く発生し、筋けいれんも例外ではありません。

 

 

さてさて、対処法の流れで考えると、木の象意ですから「急激に動いてはダメ」「急激に止まってはダメ」「温度差で急激に冷やしてはダメ」ということになります。

また酸味の過食(お酢やお酒、柑橘類が多すぎるのはよくありません)に注意してください。

 

ときどき健康のために黒酢(黒酢サプリ?)を常用している人が筋けいれんが改善されないのは、完全にバランスを失っているためだと考えます。いくら良い栄養でもバランスが崩れることがあります。とくに栄養が多い場合はコントロールが難しいものです。そういう意味ではお酒の常用は偏りの代表ですけどね。

 

お灸をしましょう

 

いろいろケアすることはあるのですが、基本的になんらかの影響で血行障害(血流が悪い)という下地があり、急激な運動や運動後の放置が筋けいれんのキッカケになると考えます。

 

東洋医学での症状の発生は「下地+キッカケ」なのです。

 

ですから、キッカケを注意して極力減らすとともに、下地の疲れを減らす工夫が大切です。

 

 

そこでお灸が役に立つのです。副作用もないですし。

 

 

お灸をすえる場所はおおよそ2箇所、左右で計4点と考えてください。

 

場所は足三里太衝でOKです。

 

太衝は足の甲にあって、親指と人差し指の骨がV字に合流するところで、動脈が拍動しているところです。(わかりにくのですが、手の合谷と同じ部位を足に置き換えてください。いっけんわかりにくいですけど冷静に置き換えればわかると思います。)

 

筋肉の境目のツボでしたら指圧でも良いと思うのですが、太衝はあまり指圧しないほうが良いと思います。基本的に筋肉を揉みほぐすという発想ではありませんから強い刺激は与えないでください。

 

さいごに

 

どうしても健康に関することなので、その都度、触れなければならないのですが、お灸を数日すえても変化がない場合や悪化する傾向にあったら病院や鍼灸院での受療を考えてください。重篤な疾患が隠れている可能性もあります。

 

自己判断に固執したり、表面的な理解で周囲に医療機関への受療する機会を失わないようにご注意ください。

 

 

足がつる(ここでは筋けいれんのこと)のは、寒暖差や睡眠不足や塩分・水分が不安定になってもよくあるので、放置されがちですが小さな変調をしっかり改善する機会にしてください。

 

(書き忘れましたが小中学生に成長に伴って筋肉の負荷が増えて筋けいれんというものあります。私がはじめて足をつったのは中学1年生の部活のあった夜中だったと今でも覚えています。ベットから転げ落ちるほど痛かったです。)

 

 

余計なお話しも多くなってしまった気がしますが、セルフケアの良さ・可能性を実感していただければ幸いです。長文お読みいただきありがとうございます。

 

 

他にも気になる症状があればTwitter等で呼びかけていただければと思います。

 

 

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マツモト コウイチ

開業17年超の鍼灸師です。鍼灸の普及啓蒙を実践するYoutubeも始めました。ブログでは東洋医学を中心にビジネスから教育、エンターテイメントまで多くの人の成功と挑戦を見渡しています。東洋思想研究を深め居敬窮理(振る舞いを慎み、道理をきわめて、正しい知識を身につけること)を実践していこうと思います。

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開業17年超の鍼灸師です。鍼灸の普及啓蒙を実践するYoutubeも始めました。ブログでは東洋医学を中心にビジネスから教育、エンターテイメントまで多くの人の成功と挑戦を見渡しています。東洋思想研究を深め居敬窮理(振る舞いを慎み、道理をきわめて、正しい知識を身につけること)を実践していこうと思います。