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「陰陽五行を以て本根となす」
東洋史学の泰斗、那珂通世博士は『支那通史』において
「支那の神道は陰陽五行を以て本根となす。
その説は太古に起り、人心に浸透すること甚だ深く、
儒・墨・道・法・兵・医の諸家、皆その範囲を脱する能はず」
と、説き、儒教・道教を始め、中国文化の基盤は易・五行にあり、上記諸学はこの上に初めて作動、展開するものであることを簡易な表現のうちに示唆しておられる。
『吉野裕子全集10巻』あとがきより
太古の文化の共通項
世界四大文明の一つである黄河文明はやがて殷(商)や周といった時代を迎え春秋戦国時代を経て漢など当時としては世界をリードする発展を見せたといいます。
なかでも、「陰陽五行」という考え方ですべてが構成されているという考え方をもっており、これを理解することが大切であると説きます。ここでは、それが真実なのか、どうかではなくて、「当時はそのように考えていた」という事実こそが最重要な事柄であり、どこまで陰陽五行が正しいのか(現代的に通じるのか、未来的に普遍なのかを検証せよということではない)のです。
現代的にいえば、いわば「科学的」という言葉とニュアンスが似ているかもしれません。
今の多くの人は「科学」に信頼を寄せます。そして科学的根拠とか再現性を重視する風潮であることには変わりありません。
その当時の価値基準を知ることは、現代的な観点では理解しえない視点に気づかせてくれる可能性があります。いや、むしろそれは逆で当時の価値基準を知らないと現代では理解不可能なことばかりになるでしょう。
そういう意味で、陰陽五行を理解することが儒学、兵学、医学など現代でも通用しそうな学問を修めるうえで必要な「本根」だというのです。
マツモト コウイチ
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