今回は組織のマネジメントに関係したことがあれば一度は聞いたことがあるピーター・ドラッカーの本です。なお基本的に良書と思ったものしか紹介しませんので星の多い少ないではなく、紹介する段階で良書だと思っていただけるとよいと思います。
『賭けの考え方』
★★★☆☆(3/5) 鍼灸師向け:経営者的大局観が理解できます。
★★★★☆(4/5) 一般向け:ビジネスに関した組織・目標・アプローチなどヒントが満載です。
『ドラッカー名言集』
本気で生きていて、わかること
本書は多くのドラッカーの著作から名言と思われるものを厳選しまとめたものになります。英語の対訳も併記してあり、本来の意味も確認できるよになっています。
通常、まとめたものの多くはその前後の意味がわからないと抽象的すぎて理解が難しいのですが、ことドラッカーの著作に関しては、(企業や団体の組織の)マネジメントということで語られていることが多いので私たちが想像しやすい形で伝えられているために共感・参考になることが多く述べられています。
未来という限られた資源をどうするか
優先順位の決定には、いくつかの重要な原則がある。
すねて分析ではなく勇気にかかわるものである。
第一に、過去ではなく未来を選ぶ。
第二に、問題ではなく機会に焦点を合わせる。
第三に、時流に乗るのではなく独自性をもつ。
第四に、無難で容易なものではなく、変革をもたらすものを選ぶ。(本文より)
時間というものは無情で、保管もできなければ取り返すこともできません。どんなに裕福であっても、どんなに努力しても、どんなに願っても時が来れば人生はそこで終了です。残酷ですが、これは事実としていつまでも存在し続けるでしょう。
私たちが未来を有益にするためにも、「いま」の判断が求められます。
そして、その「いま」の判断を確実なものにするための原則を述べています。
私たちはどうしても過去を基準にしていまいます。過去に痛い目にあったから、二度とそうなりたくないという価値基準を持つのは誰しも同じでしょう。しかしながら、ここでは過去よりも未来を選ぶというのです。考えてみればその通りです。過去と未来、変えられるのは未来だけなのですから。これから良くしようと思っても過去は変えられません。できることとすれば過去の意味合いを変えることくらいです。つまり、未来に成功して、その成功も過去の失敗があればこそと理解するくらいしか過去を良くする(良い意味を持たせる)方法はありません。だからこそ、人生を良くするには変えられない過去よりも変えられる未来に注力することが正しいと気付くのです。
個人事業でも迷うもの
利益が重要でないということではない。利益は企業や事業の目的ではなく、条件である。利益は、事業における行為や意思決定の理由、原因、根拠ではなく、妥当性の尺度である。
(本文より)
企業に勤めると利益の重要性を考える必要もなく、その仕組として利益を得ようとするでしょう。個人事業ではより利益を得る動機が目に見える形になると思うのです。つまり、利益をあげなければ零細企業ではゲームオーバーに直結するのです。
ただ、その利益を考えるうえでしっかり理解しておきたいメッセージがあります。
利益は妥当性の尺度。私たちが行う事業に妥当性があるのか。私たちの未来に妥当性があるのかを信任する賛否を問うことなのです。ですから、利益を得ることを悪いことと思う日本的な悪しき価値観や利益のみを追う姿勢は正しくないことがわかります。
妥当性の尺度ということで絶対的な指標ではありませんが、少しでも良い状況に改善する指標と考えると理解できる気がします。
成果をあげること
成果をあげる秘訣の第一は、共に働く人たち、自らの仕事に不可欠な人たちを理解し、その強み、仕事の仕方、価値観を活用することである。仕事とは、仕事の論理だけでなく、共に働く人たちの仕事ぶりに依存するからである。
(本文より)
ドラッカーがいうには、仕事ではなく、仕事をともにする人の影響が成果に直結すると説いています。
おどろくべきことに、これはかつて「叶う」という漢字について触れたことと同じ結論です。端的にいうと、叶えるという漢字の「叶」は「協」の略字体なのです。そして、協は「力をあわせて成し遂げる」ことをあらわしていて、ひとりでは実現できないことを組織だって達成することを言っています。「叶う」という漢字は、このことから、夢の実現のためには仲間と力をあわせる必要があると教えてくれるのです。
ドラッカーのいう仕事だけではなく仕事をする人を理解するというのも、夢の実現のために必要だと説く漢字のこととまったく同じ意味を伝えているのです。
私たちは協力することの大切さを漢字でもドラッカーの助言でも、同じように大切だと説かれたのです。
さいごに
ただ売れているわかりやすいビジネス書は、実践的に使える点も多いでしょうが、著名人の本質的な経験や洞察による言葉を落ち着いて噛み砕いて活用することも得ることが多いと思います。
今回も私がライフワークとしている漢字の解釈と共通する内容になったり自分としては、あらためてまとめて財産になった気がします。
大きな功績・業績を残した人は、不思議と東洋思想的な考え方を身に着けているような気がします。実際は東洋思想的ということではなく、バランスや洞察など観察眼が単一ではなく、論理や情緒が上手に調和が取れていることなのでしょう。それを私が無意識に東洋思想的と表現していると思います。
なによりもうまくいくには極端ではなく、結果的に調和が取れる方向に向かうものでしょう。それを感覚的なのか、論理的なのか、無意識なのか、意図的なのか、暗黙知なのか、形式知なのかということは今後のテーマとなるかもしれませんが、少しヒントを得られた気がします。
マツモト コウイチ
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