今回は主に治療家(鍼灸師)向けであるとともに、お金持ちになりたい人にも役立つであろう心構えを学ぶ書籍の紹介です。基本的に良書と思ったものしか紹介しません。
そもそも書評として紹介しているもの自体、★が1つであっても得ることが大きいものです。書籍は投資としてこれほど費用対効果の優れているものはありません。自分を成長させる方法は数多くありますが書籍による学びは、読む人自身の汲み取る力に比例します。ですから、単なる賭け事の指南書と思わずにギリギリの精神状態における自制の方法を垣間見てほしいと思うのです。そのような思いからご紹介します。
『賭けの考え方』
★★★☆☆(3/5) 鍼灸師向け:応用発展して経営や治療の心構えの参考になります。
★★☆☆☆(2/5) 一般向け:資産運用や資金管理のリスクとの対峙方法の心構えに。
『賭けの考え方』
人生、すべての局面は賭けだ
本書はもともとポーカープレイヤーの心構えを示したものです。
日本人がポーカーというと5枚のカードをいくつか交換して「せーのっ」で出すドローポーカーをイメージがありますが、世界的に主流なものは手元に2枚のカードを自分のものとし場に3枚目、4枚目、5枚目が置かれ手札と場札のあわせたもののなかから最良手で勝負するテキサスホールデムというものがあります。
知らない人からはポーカーは運のゲームだと言われがちです。しかしながらテキサスホールデムはチップを積むことによって相手をそのゲームから降ろさせたり、手札が弱いふりをして相手に高額のチップを積ませたりと心理戦の要素がかなり多くあります。
動揺したらすぐにカモになってしまう真剣勝負。まさにポーカーフェイスが語源にもなった冷静沈着ぶりが求められます。
真剣勝負で垣間見える
やはり大金を賭けた場面は人間性がもっとも反映されると思います。
雀鬼の桜井章一さんや将棋の羽生善治さんも真剣勝負の世界に身を置く人ですが彼らの著書に通じる真理を垣間見た言動がとても多く感じます。
たとえば本書から学んだことを大切にすることは「大金を掴んで不幸にならない方法」であるともいえますし「強い自制心を身につける心得」であるとも言えます。
一流の人はそのような自省の積み重ねで結果として成功しているに過ぎないと思うのです。
逆にいうと宝くじをあてて人生を棒に振るような人は大金を受け取る準備(=自制心)ができていないがために返って不幸が加速したとも思えるのです。
お金が怖いのではなく、お金が行動を加速させたに違いないのです。バカなお金の使い方はお金がなければ発揮できませんが、お金があったためにバカが発揮できたようなものなのです。
勝ち組の習慣とは
本書ではいくつかの勝ち組への習慣を紹介しています。
それは単なるテクニックというよりはいかに自分をみつめ自省するかという一言に集約されます。
たとえば「さまざまな現実を理解し受け入れる」ということ。
これは理論的に圧倒的に有利であり勝ちパターンであっても、実際には負けることがあります。それを受け入れることはなかなか勇気のいることです。また何度も負けを受け入れていると自信がなくなったり、この先勝てるのかどうか不安になります。迷いがあらたなミス、しかも自分では起こしえない簡単なミスを誘発するのです。
ほかにも「長期的な視点でプレイする」ということを挙げています。
人はどのように負け、どうすれば負けないかという分析があります。そして私が本書から一番学んだことは「短期的には運が物を言う。長期的には実力が物を言う。」ということです。(これをずっと忘れなければ本書を買わなくてもよいかもしれません)
これはどんな幸運があろうとも長期的にみていけば実力に収束するという、ある種、統計や確率と同じ原理原則のことを言っているに過ぎません。
しかし、私たちは短期的な成功に対して免疫がありません。同じように「簡単で」「すぐに」成功したいと思う欲に振り回されます。その原因は短期的(近視眼的)に物事を考え過ぎていたと気づくでしょう。
成功するには成功するまでの時間が必要です。
治療だって治るまでの時間は必ず必要です。骨折が一瞬で治ることはありません。それはいくら強い願いだとしても、どんなテクニックがあったとしても自然の摂理として無理なものは無理なのです。それを理解せずに自分の理想や強欲さからできるに違いないと判断することこそおこがましいことなのです。
そしてここに特筆すべき学びは金を儲けることよりも正しい決断を下すことを優先させるということです。この一文はなかなか理解するのに勇気が必要です。
金儲けのための行動が金儲けよりも優先させることがあるのか?ということです。
実は金儲けをするよりも優先させることがあるのです。
それは正しい決断を下すということです。金儲けはあくまでも結果です。結果が正しいかどうかはあとにならないとわかりません。しかし、正しい決断は正しかったかどうか徐々にわかってくるのです。
ここでいう正しいというのは、ポーカーで仮に相手の手札、掛け金、考え方がすべてわかっていた場合に自分の取りうる最良手のことです。
似たような説明をするならばじゃんけんにおいて、相手がグーを出すとわかっていてパーを出すのがここでいう正しい決断となります。
しかしながら、実際は相手が何を出すか、どのように考えているのかわからないものです。
それは経験や勘、観察や統計などは正しい決断を積み上げていくと総合的に磨き上げられていくというのです。
目先の金儲けのために、理論も経験も反省も蓄積されないのではどれほど時間を費やしてもレベルは上がらないでしょう。テキトーを繰り返して上達したと思っても、それは一時的に運がよかっただけに過ぎません。価値ある負け、価値ある勝負というものを積み上げていかなければお金も時間も労力も最初からすべて無駄にしているのです。
さいごに
最終的には人間の判断のおおくは心理的な影響が大きいものです。不安だから買っておこう、無くなるといやだから買っておこう、ついでだから買っておこうなど心理の影響は計り知れません。
商売をしていて売る側もそうですが、個人として買う側もしっかりと資金需要の変動などを考えておかなければなりません。
しっかりとしたパターンの認識と、それを粛々と実行する胆力を培うことが求められます。
私は本書でそのような点を強く学びました。
あくまでもポーカーの教科書的な内容ですが、言及していることを応用発展することができる人であれば、経営者や投資家にとってもとても意義深い内容に感じられるのではないかと思っています。
マツモト コウイチ
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