書評『ZEROtoONE』

今回はゼロから何を生み出すかというアントレプレナーのお手本であるピーターティールの著作についてご紹介します。彼は世界最大のオンライン決済システム、ペイパルの共同創業者であり、現在はエンジェル投資家として活躍しています。

ZEROtoONE
★★★☆☆(3/5) 鍼灸師向け:これから開業する人には少しばかり勇気をくれる本。
★★★★☆(4/5) 一般向け:ペイパルの成功からこれからの起業まで見渡す良書。

 

『ゼロトゥワン』

必然的に成功する方法

 

 

本書はこれからのビジネスを考えるうえでは必読書にあげられるものであり、内容は体験をもとにしつつも普遍的な価値を示唆しています。

 

存続性はあるのだろうか

価値ある企業となるには、成長するだけではなく存続しなければならないのに、多くの起業家は短期的な成長しか見ていない。

彼らには言い訳がある。ー成長は測りやすいけれど、存続性は測りにくい。

(略)

短期成長をすべてに優先させれば、自問すべき最も重要な問いを見逃してしまうー「このビジネスは10年後も存続しているか」というものだ。数字はその答えを教えてくれない。むしろ、そのビジネスの定性的な特徴を客観的に考えてみる必要がある。

(本文より)

 

おそらくいつの時代を切り取っても「激動」という言葉で総括できるのではないでしょうか。

過去になってしまえばすべての問題は解決しているのですから。(放置されていることもありますけれど)

どうしてもビジネスを始めていると成長という尺度を意識してしまいがちです。その視点についても本書では冷静に指摘しています。よく企業は継続を前提に考えられているといいますが、実際は継続を希望したところで社会の変化についていけない状況に陥ることなど簡単にあるわけです。

10年後20年後という未来に必要なビジネスはもしかしたら同じ形で提供できないと考えたほうが良いのかも知れません。

 

そういう意味では絶え間ない変革が求められるので、この柔軟性こそ存続性の鍵となりそうなことだと言えます。

 

ラストムーバー・アドバンテージ

ファーストムーバーアドバンテージ、先手必勝とよく言われる。市場に最初に参入すれば、ライバルがいない隙に大きな市場シェアを握れるという意味だ。でも、先手を打つのは手段であって目的ではない。本当に大切なのは将来キャッシュフローを生み出すことであって、君が最初の参入者になっても、ライバルがやってきてその座を奪われたら意味がない。

(本文より)

 

治療院の開業でも似たような質問はよく受けます。周囲にはすでに治療院が多くて参入の余地がないのではないか、人口の多い場所で治療院のないところを探そうと思う…。

ものの見方というものは、実際に目的と手段がごちゃまぜになっているという過ちはよくあることです。

治療院の開業の件もそうですが、周囲に治療院が少ないところを探すという先行者利益がどこまで通用するのでしょうか。周囲に治療院がたくさんできたら白旗を振って移転するのでしょうか。

ですから、物事は先手必勝と考えれば良いわけではなく周囲との差別化を通して参入障壁を築くなど違う手段を同時に実行することになるのでしょう。これらも言われれば当たり前に聞こえますが、実際、このような冷静な視点はよほどの経験値がないと「知っている」というレベル止まりで「できている」とはなりにくいものだと痛感します。

 

とにかく10倍優れたものを

確かな経験則から言えるのは、プロプライエタリ・テクノロジー(ビジネスの根本的な優位性)は本物の独占的優位性をもたらすようないくつかの重要な点で、二番手よりも少なくとも10倍は優れていなければならないということだ。

それ以下のインパクトではおそらくそこそこの改善としか見なされず、特にすでに混みあった市場での売り込みは難しい。

10倍優れたものを作るには、まったく新しい何かを発明するのがいちばんだ。それまでまったく何もなかったところで価値あるものを作れば、価値の増加は理論的に無限大となる。

(本文より)

 

ほかにも10倍の改善ができれば競走から抜け出せるといいます。既存のソリューションの改善を10倍高める方策が見つかるかチェックしてみると良いでしょう。

10倍という数字は並大抵の努力で達成できるわけではありません。おそらく2倍でもキツイです。

 

それでも他社との競走から抜け出すためには、それぐらいの強みが必要だと理解するには適切な表現かもしれません。

 

市場拡大の教訓

正しい順序で市場を拡大することの大切さは見過ごされがちで、徐々に規模を拡大するには自己規律が必要になる。大成功している企業はいずれも、まず特定のニッチを支配し、次に周辺市場に拡大するという進化の過程を創業時から描いている。

(本文より)

 

私はいち経営者として、この本で事業の生まれるところから育つところまで教えてもらった気がします。核心的な部分は本書を読んでもらうとして、次なる市場拡大の教訓も大きく影響を受けた点でもあります。

どしても、存在すること(延命?)に全力を発揮して疲弊するというパターンに陥りがちです。そして、このパターンで数年やり過ごしたとしてもドラスティックな変化や構造的なパラダイムシフトが起きてしまえば一瞬で事業が詰むということも懸念されます。(そしてその懸念を持っておくべきです)

 

小さな事業だからあまり影響がないと思ったら、思わぬ影響に足を掬われかねません。

 

学ぶこと、そして創造することを常に考え現状維持の誘惑から決別すべきことがあると思います。やはり安定は毒ですね。その先の毒を見越して事業を進めていきましょう。

 

さいごに

ゼロからイチにすることにとてもシンパシーを感じます。なぜなら自然界ではよくあることだからです。たくさんの生命を賭けてたくさんの成功と失敗があるわけです。

ゆえに動かないことが完全なる失敗で、挑戦したことはその先の成功と失敗への通過点ですから、成功から逆算すると当然、挑戦しなければ成功がないとわかるのです。

 

なによりも事業は正解が読みにくいもの。

 

自分の想いを賭けて表現するには、最高の挑戦すべき課題だと思います。

本書は、立場は違えどさまざまな意見によって考える機会を与えてくれます。新しく何かをはじめたい、始める必要性を感じている人には大切な一冊になると思います。

 

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マツモト コウイチ

東洋思想研究家でありUdemy講師でもあります。開業15年超の鍼灸師です。ビジネスから教育、エンターテイメントまで多くの人の成功と挑戦を東洋思想家として見渡しています。すべての投稿に関して講義講演が可能な内容となっています。居敬窮理(振る舞いを慎み、道理をきわめて、正しい知識を身につけること)を実践していこうと思います。

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東洋思想研究家でありUdemy講師でもあります。開業15年超の鍼灸師です。ビジネスから教育、エンターテイメントまで多くの人の成功と挑戦を東洋思想家として見渡しています。すべての投稿に関して講義講演が可能な内容となっています。居敬窮理(振る舞いを慎み、道理をきわめて、正しい知識を身につけること)を実践していこうと思います。