日本人が訪日外国人の増加を考えるときに日本の魅力は「おもてなし」の精神だと答える人が多いように感じます。それは実際にそうかもしれませんし、日本人の思う日本人像なのかもしれません。
ただ、この「おもてなし」という概念、わかっているようでわからない人も多いのではないでしょうか。私は以前、「おもてなし」と「サービス」はどう違うか?という点を考え投稿しました。
今回はそもそも「おもてなし」って何?という点についてお伝えしようと思います。
言葉って難しい
たとえば「怒る」という言葉は理解できても「怒り方」はさまざまです。イライラする態度、物に当たる人、嫌味を言う人、無視する人、罵声を浴びせる人、理路整然と不満を指摘する人、これらはすべて「怒っている」とされるもの。
一見「怒るのは良くない」と言われても「不機嫌な表情で無視しているだけだから怒ってない」と言ったところで周囲には怒っているとみられることもあります。
これと同じ現象がおそらく「おもてなし」にもあります。おもてなしをしていると言っても、それがどこまで有意義な対応なのかは明確に答えられる人はいないでしょう。
かくいう私もよくわからない節があるのですが、その各人のおもてなし観があると知っているだけで有益だと思うのです。ましてや訪日外国人を基準に「おもてなし」を考えるのですから外国人視点でおもてなし観を知っておくのは有益でしょう。
おもてなし in the world
WIRED (ワイアード) VOL.28 /特集「Making Things ものづくりの未来」にもおもてなしについて興味深い記事があります。
「理想のおもてなし」に対するアンケートを国内外で実施したというのです。
アメリカ人
アメリカ人は「ホスピタリティ(=おもてなし)」と聞いて無意識に連想する特徴的なキーワードが以下だといいます。
上位から迅速さ、徹底的、信頼、有益さ、正確性。そして対価もしっかり払う姿勢があるというのです。
無料やおまけというものよりも「欲しいものがしっかりしている」「欲しいものが早く提供される」「欲しいものが理想と一致する」という自分が望むものを最善に満たすものを望んでいることがわかります。
イギリス人
上位から効率性、安さ、思いやり、親しみやすさ、有効的となります。この関係性は主人と執事とみると理解しやすいと言います。
文化的な違いとはいえ、日本人からするとアメリカ人とイギリス人はそれほど違わないと思いがちですが、同じテーマでもとてもお国柄を表していることに妙な納得を覚えてしまいます。
そして、それに応じて「おもてなし」の概念も幅があると気づきます。
ヨーロッパ人
上位から歓迎、親切さ、素敵、くつろぎ、清潔さ。自分で発見するよりも提供される心遣いを高く期待しているように感じます。
私が思うなかで日本人のイメージする「おもてなし像」はヨーロッパ人の人と合致するでしょう。それはもしかしたら日本人が思う訪日外国人というのは無意識にヨーロッパ人なんかもしれません。
うがった見方をするとヨーロッパ諸国では親切さやくつろぎが欠けているのかもしれませんね。このあたりヨーロッパ人と接点が少ない私には理解しかねますがそのような邪推をしてしまいました。
アジア人
上位から美味しい食べ物、サプライズ、差別をしない、素早い対応、リラックス。これらは好奇心旺盛な点を期待されている気がします。
美味しいというのもお国柄が出ますのでとてもむずかしいかもしれませんね。
個人の対応で
日本人はヨーロッパ人に対しては無意識に思っているままの「おもてなし」でOKだと思います。
アジア人に対してはとにかく美味しいものをごちそうしましょう(偏見ですけれど)
またアメリカ人には「すばやく」、イギリス人には「相手を立てて」と言ったところを意識すれば満足してもらえるのではないでしょうか。
一口に「おもてなし」と言って過剰サービスになるよりも、ちょっと心がけて良い関係を保てるように知っておきたい視点ですね。
さいごに
この資料は世界へ向けてアンケートされました。分類された文化圏でグループ分けした結果をまとめたものです。おそらく日本人にも同じようなアンケートをすれば地域性やばらつきが出てくると思います。
ですが「おもてなし」という言葉に幅があると知っただけでもその対応が柔軟になって有益ではないでしょうか。
これからますます鬼の首を取ったように「おもてなし大国ニッポン」という話題が聞かれることでしょう。そのときには曖昧な理解ではなくもう少し分析的な視点で考えられるようにしていたいものです。
この話題は文化論や伝統を考えるうえでもっと深く学ぶこともあるでしょう。ただ個人レベルでは今回の理解だけでも気づくことが多いと思います。より意味のある「おもてなし」を実践できるよう、その一歩になれば幸いです。
マツモト コウイチ
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