「おもてなし」と「サービス」はどう違うのか?

 

2020年は東京五輪。2025年には大阪万博。2018年には3000万人を突破した訪日外国人。日本ではその訪日外国人の増加を商機ととらえようという動きが活発になってきました。

訪日する理由が日本の魅力が向上したかどうかは議論があるでしょう。(諸外国の経済発展により日本に気軽に来れるようになったという可能性もあります)

ただ、日本人が日本の良さをアピールするときに「おもてなし」という言葉をよく使うように感じます。果たしてその「おもてなし」という言葉、どこまで理解しているでしょうか。今回は「おもてなし」とは何か整理するために調べてみました。

 

「おもてなし」は「すっごいサービス」のことではない?

 

「おもてなし」は「サービス」でしょうか?

違います。「おもてなし」を英訳する場合「ホスピタリティ(hospitality:親切にもてなすこと、歓待、厚遇)」となるのが一般的です。

それではサービスってなに?という疑問が出てきます。

サービス(service)は奉仕的な活動、また、職務としての役務提供ということになります。つまり、10提供する仕事で10提供したら「良いサービス」ということになります。10提供する仕事で7や5ではダメ。2では話にならないという印象だと思ってください。

 

簡単な定義

 

ここでは便宜上「おもてなし」と「ホスピタリティ」を同じ意味と考えます。

サービスは「役務」です。ホスピタリティは「ふるまい」です。

 

よく私が例に出すのが、お寿司屋さんにおいて「お茶」を出すという決まりごとに対して、速やかにお茶を持ってくるのがサービス(良いサービス)であり、外は暑いと思い「冷たい麦茶」に変えて出そうというのがホスピタリティです。

もちろん、どちらが間違いということではありません。事前に決めたルールをきっちり守るサービスも事前に相手に尋ねる煩わしさがいらないという意味ではホスピタリティがあると言えるのですから。

 

あえて二分して理解すると

 

理解をすすめるためにあえて二分して考えます。

両者の性格として機能であるのはサービス、性能であるのはホスピタリティといいます。

  • 性質として「アクション(うごき)」であるサービス、「ビヘイビア(ふるまい)」であるホスピタリティ
  • 人間関係において「垂直」であるサービス、「水平」であるホスピタリティ
  • マニュアル化が馴染むのがサービス、マニュアル化がなじまないのがホスピタリティ
  • 経済効果において売上高を創出するサービス、リピーターを創出するホスピタリティ
  • 教育するうえでトレーニングによるサービス、コーチングによるホスピタリティ
  • 本質として「達成するもの」であるサービス、「発見するもの」であるホスピタリティ

 

このように分けることができます。

経済効果を考えるとサービスだけを向上させてもバランスが悪いことがわかりますね。最低限サービスを徹底して、その次にホスピタリティを高める理解を従業員に普及させる施策が必要でしょう。

 

誰が中心か?という視点

 

サービスは提供する側の視点です。提供する側のルールを徹底することが良いサービスです。相手が大人であろうが子供であろうが、1杯のジュースを出すことに違いはありません。氷の量、ストローの有無など関係なく同じ条件で提供するものです。

ホスピタリティは提供を受ける側の視点です。「相手のことを思いやる」ことが日本的な良さであれば、まさにそれを発揮する機会はホスピタリティにはあります。

逆にルールで決まっているので現場の判断で融通を利かすことが難しくなっている現場もあります。サービスを徹底しても相手のためになっているとは限らないのです。

チェーン店などは全体の統一性を保つために、事細かくルールが決まっている場合があります。その場合の柔軟性が発揮できずもどかしい現場や残念な結果など弊害も起こりうるのです。

 

真のホスピタリティとは?

 

ホスピタリティには「相手を思う」ということと「何ができるのか?」という本質的な視点が必要になるでしょう。

そのためには現場の意見を聞いたり現場に裁量を与えることが組織としては大切なルールになるのではないでしょうか。

例えばリッツカールトンホテルでは、各従業員に「2000ドルの決裁権」を委譲するというルールがあります。この裁量権によって現場の「ホスピタリティの向上」が図られます。しかも、この「裁量がある」というだけで「ホスピタリティを提供しよう」という組織全体の意向が感じられます。

 

さいごに

 

もっと解説すると細かいことがあるのですが大枠としてサービスとホスピタリティの違いをお伝えしました。

東洋思想にのっとって陰陽論なのだから陰とか陽とか言っても面白いのですが、話が複雑になるので今回は割愛しますが基本的な理解だけでも十分、実社会に応用可能な内容ではないでしょうか。

なによりも、おもてなし(ホスピタリティ)というわかりそうでわからない対応を日本の特技と思っているのは視野が狭いと言わざるを得ません。むしろ玉虫色の対応を「おもてなし」という曖昧な概念で肯定する場面すら思い浮かびます。

相手に寄り添ってできる限りのことを提供する。それはサービスの根底にある思いと共通する思想だと思います。そしてときにサービスが形骸化するとその思いがまっさきに欠落する部分でもあります。

結局は相手がいなければサービスもホスピタリティも成り立ちません。関係性はどうあれ根底の思いを忘れないようにすることが「おもてなし(ホスピタリティ)」の第一歩なのかもしれません。

 

 

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マツモト コウイチ

東洋思想研究家でありUdemy講師でもあります。開業15年超の鍼灸師です。ビジネスから教育、エンターテイメントまで多くの人の成功と挑戦を東洋思想家として見渡しています。すべての投稿に関して講義講演が可能な内容となっています。居敬窮理(振る舞いを慎み、道理をきわめて、正しい知識を身につけること)を実践していこうと思います。

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